LIOJ 35th Anniversary
「LIOJ Workshopについて」
七ツ村 実

1 初めてLIOJ Workshopに参加した頃のことを思い出すままに書いてみます。参加のきっかけは1969年ハワイ大学夏期講座に聴講生として参加し、生きた英語の大切さ、特に理解される英語を話すことの大切さを痛感、そのためには相手の英語をよく聴き理解しなければならないと悟りました。当時日本はまだ大変貧しい国で、国際収支は真っ赤、国外へ持ち出す米ドルは$500に制限されていました。$1=¥360の時代に、海外旅行は大変辛いものでした。ちょうどその頃、1972年夏の頃、某雑誌でLIOJの記事を見ました。This is it!と思いました。1973年夏、初参加でした。

 3万円の安くない参加費にも拘わらず、参加希望者が殺到し、6月には満員締切り状態でした。参加者は勉学の熱意にあふれ、空調無しの各自の部屋で団扇を使い、蚊取線香の煙の中で夜遅くまで英語教育について語りあったものでした。ともに楽しんだビールの味とともに懐かしい思い出です。

 ハワイ大学夏期講座に参加した人々の中にも私と同じ考えでその後LIOJに参加された古き良き友人もあります。当時彼女は早稲田大学を卒業したばかり、その後何回もworkshopに参加され、今は50才を過ぎた頃でしょうか。もう1人は神戸大学卒業数年の男性教師、何回も参加され、兵庫県中学校英語教育の重鎮と聴いています。30代後半だった私も定年退職してもはや8年、退職時と同じ高校で、非常勤講師として元気な高校生と英語を勉強しています。Really time flies!

 1970年代のworkshop初日、参加者の能力別クラス編成のためplacement testがあり、約10のクラスに分けられ、それぞれのlanguage classに属すことになります。同業者をその専門の科目で分けることへの若干の抵抗もあったようです。その後紆余曲折を経て英語運用能力は自己申告によりlevel-1-level-4に分けられることになりました。(level-1: 初歩というよりまあまあ、level-4: 堪能 映画を見て脚本を書き取り出来るほど) かくいう私は日常生活ではあまり困るほどでなく、専門書、小説ならば少々辞書を引いて読むことができる程度です。level-2?と思います。level-3が英語検定1級とすると個人的にはlevel-2は英語検定1級と準1級の間ではないかと思います。

 当時の校長先生の意向もあってMorning Classでは、communicative Englishを訓練し、presentationではacademicな内容のものをformal Englishを聴くことで自己研修をするように課程が計画されていたようでした。でも自分の勉強が足りなくて語彙が豊富でない私にとっては大変でした。近頃はいろいろな工夫がされていて、このような大変辛い経験は私に関する限りありません。全参加者が全ての場面で楽しく時を過ごしているように見受けられます。良い悪いは別にして、時代の流れを感じます。でも全参加者が気楽にしばし現実の業務を忘れ、英語を媒体として生活する。これまた、楽しきことかな、です。

 私自身も最近は若い先生方に囲まれて、時に若い人たちから老骨に鞭打つ姿を尊敬の目で見られたり、時に若い先生方に勇気を与えられて、負けずに勉強しようと決意をしたりして、夏の研修を楽しんでいます。そこで今の私の英語はどうなのかというと出身国によって意見の違いはありますが、勤務校の外国人教師達曰く、Your English is; rather British, definitely good with a little Japanese accent, articulate, clear and easy to understand, like English spoken in Southern England, etc

2 Programmeについての感想 将来への希望などについて若干思いついたことを書きたいと思います。1973年以来、30回ほど参加しての実感は、生きた英語の勉強に限れば、これ以上の研修機関は無いと思います。instructorとしてのnative speakerは厳しい面接を経て採用され、世間で所謂、不良外人教師(人格不良、無教養、偶々native speaker)と思われる教師は無く、若いお嬢さんでも安心して良質の英語に接することが出来ます。海外旅行で遊びたい、買い物を楽しみたいと考える若者にはいささか苦しい研修かも知れません。なれど、宿泊代、教材費、授業料あわせて1週間12万円ほど、お値打ちではありませんか。などと若い先生方や教え子達にLIOJを推薦するのですが、自己研修に熱心な人には説得力がありますが、遊びたい盛りの若者には比較的安く海外研修に行くのが可能な今日この頃、いささか説得力に欠けるようです。何か魅力的なかつ若者の心をつかむ宣伝方法は無いものでしょうか。数年前$1=¥100〜110の頃、参加者が劇的に減少したことがありましたが、ここ2年ほど底を打った感じで安堵の気持ちです。大学卒数年の若い先生方の参加が微増しているのは喜ばしいかぎりです。

 さて、formal English listening, note-takingを練習するための講議は別にして、英語運用訓練のmorning classについてはなるべく少人数編成にしてもらいたいと思います。近年1学級の人数が微増しているような気がします。人件費の問題もありましょうが、是非お願いしたいことです。そうすればslow incorrect Japanized Englishでも意志伝達がもっと容易になり、その結果教材も更に良く理解出来、勤務校に持ち帰り、有効に利用できるのではないかと思います。特にoral communication Bの担当の先生方、当該教科をteam teachingで外国人教師と共に担当される先生方は必ずや面白い教材作りの材料を見つけられると思います。

 とにかくLIOJは一度参加すればその面白さ、楽しさ、更にどれほど自己研修に有効かが身に沁みて理解できます。自分と志を同じくする仲間が日本全国にいかに多いか良く解り、勇気が湧いて来ます。まず一度小田原へどうぞ。

 個人的なことになりますが、つらかったけれども役に立ったことは、morning classでThe Starman, The Prosecuter's Witnessなど映画を見て脚本を書き取ることでした。特に後者では、American English, German English, English English, Cockneyなど、聴き取りは大変と言う表現を越えていたように記憶しています。聴き取りがいかに大切かを改めて学びました。学生時代に映画の脚本を手に同じ映画を朝から弁当持ちで見たのを思い出します。若い頃疲れ知らずの頃の話です。

 さて、Last but not least; LIOJ事務局にお願いしたいことは有効な宣伝のため新年度が始まる頃に発行される英語教育関係雑誌に魅力的な広告を載せていただきたいということです。PR with charming catch phrases will do.

3 印象に残っている先生方 客員講師の先生方の名を記して感謝の気持ちを表したいと思います。

Toneko Hirai (nee Kimura): 70年代にお世話になった先生。綺麗な早口の英語が印象的。

Marilyn Fisher: 70年代にお世話になった先生。個々に忍耐強く指導された。

John Fleischauer: ユーモアに豊かな話題豊富な先生。

Kathleen Graves: 学識経験豊かな親切な先生。美しい音楽のような英語が印象的。

Jim Kahny: 滞日長く、参加者の名をよく覚えていられる親切な先生。現在校長先生。

Sumako Kimizuka: microwave approachを考案。日本人的発想なので英語が解りやすい。ハワイの小中学校の先生方の間でもよく知られている先生。

Sen Nishiyama: アポロ13号発射時の同時通訳放送裏話、感動的。どのようにしてbilingualになられたかの話も興味深いものでした。

Masao Kunihiro: 論理的に内容の濃い英語に感心。articulate speaker of English

Richard Via: 他人の気を惹く話術の巧みさに仰天。高校教科書に戯曲が載ったことあり。

Rowland Harker: 初代の校長先生。table mannerを上手に英語で解説。洋食に不慣れな日本人が多かった頃の話です。

Move your spoon away from you, not toward you.

Keep a fist distance between the table and you; otherwise something may fall on your lap and

you may have a dirty skirt.

Don't blow your soup. Wait till it cools.

Always be ready to talk to your friends even while eating. etc.

Virginia LoCastro: かつてNHK TV英会話講師。学識経験豊かな先生。酒好きの笑い上戸。morning class instructorとしてお世話になりました。

4 印象的な参加者

Wunlop Nawamarut: from Thai Chamber of Commerce, 参加当時助教授。今は教授?

毎晩麦酒を飲みながら日本とタイの文化の違い、どんな異性が好まれるのか、就職に関して、

英語の果たす役割、大学での英語教育の実態、について話し合った。LIOJに参加して日本人に対する偏見が無くなったと。 ビールが文化の壁を崩す。

益岡康夫:参加当時日本航空客室乗務員英語教官

航空会社での乗務員英語訓練についていろいろな話。高校の先生方に訓練所の見学をよく勧めておられた。豊富な文法知識、豊かな語彙、流暢な話し方、我、仰天。

和田稔:参加当時千葉県教育委員会主事。文部省調査官定年退職後、私大教授。

勿論流暢な英語では有りませんが、話される内容に外国人は耳を傾ける。その後LIOJに於いても講演をしていただいたのを覚えています。

私の誘いに応じて参加の高校の同僚や教え子たち、英語の先生ばかりか、体育の先生も参加してくれて感謝、驚き、尊敬の気持ちでいっぱいです。

その他に研修会を楽しく有意義にして下さった参加者は田淵通明、相賀慈恵、今西郁夫、日比野恭子、岡野緑、大川信夫、向中野純子、坂根鉦次、加藤茂樹、増原仁美、金沢秀樹の先生方です。

*2002年アジアセンターODAWARAの40周年記念行事に寄稿


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