LIOJ 35th Anniversary
「英語教育の原点」
小田原市城山中学校 勝又めぐみ

 すでに10年以上の歳月が過ぎてしまったが、あの一年程充実した年はなかった。

 1992年4月、小田原市内の12校が、英語の授業において外国人講師とのTTを完全実施することになった。ALT4名のうち2名が市採用、2名がLIOJからの派遣であった。たまたま当時の私の勤務校は後者となった。しかし、私にはTTの経験は皆無に等しく、LIOJの講師を迎えるにあたって大きな不安があった。理由は語学力に自信がないこと、初めての事態に生徒の反応が予想できないこと、教室という限られた空間と授業という限られた時間の中で生徒とLIOJ講師との狭間で私はどのように立ち振舞えばよいのかわからない・・・など、プレッシャーは大きかった。同時に、英語の教師としての私の生き方の大きな転機になるのは間違いないと予感していた。

 私の不安は杞憂であったことにすぐ気が付いた。一年間、毎週水曜日と木曜日に、明確なねらいを持ったレッスンプラン(LIOJ作成)を2人のLIOJ講師と交互にこなし、5クラスを次々と必死にこなして行くと、もう学年末であった。

 LIOJの講師とのTTは残念ながらこの一年で終わってしまったが、教員としての私にはかり知れない示唆と新しい展望をもたらした。その後7人の市採用のALTとのTT体験を積みながら、公立中学校の英語教育の目指すものやTTの必要性について自問自答を繰り返していく中、いかにLIOJの英語学習の方針やアプローチの方法が優れていたかを実感した。LIOJの教育理念はキャパシティーが広く、中学校のカリキュラムが変化しても、子供の質が変わっても公立中学校の現場に対応できると考える。

むしろ、先を見越している。LIOJのレッスンプランにはコミュニケーション活動が効率よく盛り込まれ、同時に文法事項の理解と文化的気づきが巧みに織りまぜられており、英語の魅力を感じる事ができた。生徒はわくわくしながら授業の展開に乗ることができた。TTの英語の時間だけは別世界のようであったのを思い出す。

 このように楽しくなおかつ充実した授業が成立する条件は何だったのであろうか。LIOJには、十分に練られたレッスンプランがすでにあったことは特筆すべきことである。一回ごとの授業は一年間のスパンの中に意味をもって位置付けられていた。そして、授業前の打ち合わせと授業後の評価において、活動のねらいや発問の意図などについて綿密に追求したことが挙げられる。TT成功の秘結は指導者の姿勢にあった。より質のよい授業を作り上げようとする意欲、格調ある英語教育への理念、学習への動機付けを必要とする生徒をも巻き込む寛大な教育の心をLIOJスタッフはもっていた。また、そのような指導・支援体制はLIOJには備わっている。

 近年LIOJのワークショップに参加するようになり、教育が生徒達へ及ぼす影響の大きさや、指導者としての資質の重要性をあらためて痛感している。また、多岐に渡る教育に関する内容や、国際的な教育事情等を得る機会を持つこともできた。かつての「アジアセンター」から「アジアセンターODAWARA」となり、LIOJが地元にとってより身近な存在となったことも小田原市民である私はとてもうれしく思う。教育がますます重要となる今日、とりわけ公立学校の英語教育充実のために研究を続けているLIOJには感謝している。今後とも、LIOJの理念を英語教育の原点と考え、ALTとのTTや日々の授業に励みたいと思う。


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